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駅伝はマラソンをダメにするのか?

2017年2月7日
昨年5月のゴールデンゲームズのべおかの1万メートルで、ポール・タヌイ(九電工)に食い下がる市田孝(旭化成)

 「駅伝が日本のマラソンをダメにした」と主張するのは、主にメディアだろうか。いやいや、駅伝がなかったら、日本のマラソンはもっとダメになっていた、と私は思う。その思いをさらに強くした年明けだった。

 元旦の全日本実業団駅伝は旭化成が18年ぶりに優勝を飾った。以前のように、高卒の選手が中心のチームでなく、今年は箱根駅伝で活躍した選手ばかりが顔をそろえた。これも時代の流れだろう。このメンバーの中にも今年のマラソンでの活躍が期待される選手がいる。双子の市田兄弟だ。ともに鹿児島実高から大東文化大をへて、旭化成に入った。特に兄の孝はこのところ安定した力を発揮していおり、宗猛総監督の期待も大きい。2月26日、東京で初マラソンに挑む。

 市田孝はもともと2020年の東京五輪ではマラソンで勝負したい、いう意欲を持っていた。そのステップとしてこの冬はハーフマラソンを走るという計画だったが、宗猛総監督が「東京五輪をマラソンで狙うなら、今季からマラソンを走らないと間に合わない」と諭した、という。箱根での活躍の派手さはチームメートで同期の村山兄弟に譲るが、延岡で地道に力をつけてきた。「村山兄弟はすでに日本のトップ選手。負けないようにと刺激をもらっている」と孝は話す。弟の宏も3月のびわ湖に挑戦する予定だ。

 2、3日の箱根駅伝にも好素材がたくさんいた。最近の選手がマラソンへのチャレンジを積極的に口に出すようになったのは良い傾向だと思う。

 個人的に目についたのは、2区と6区でそれぞれ区間賞を獲得した神奈川大の3年生鈴木健吾と日体大の4年生秋山清仁だ。鈴木は、青学大の一色恭志やアフリカ勢ら各校のエースが集まる区間で見事な走りを見せた。今年の目標は8月のユニバーシアードのハーフマラソンでのメダルだが、東京五輪を目指して「来年は東京かびわ湖でマラソンを走り、実業団の選手に挑戦したい」と話す。

 秋山は今大会唯一の区間新記録をマークし、最優秀選手に与えられる金栗賞を受賞した。山下りで活躍し、その後大成した選手に、日体大OBの谷口浩美さんがいる。その谷口さんからは「マラソンで頑張って欲しい」と直接、言われたそうで、本人も「東京五輪の舞台でしっかり、マラソンに挑戦したい」と言い切る。4月からは愛知製鋼に入社し、谷口さんとともに旭化成で活躍し、マラソンで初めて2時間8分の壁を破った児玉泰介監督の指導を仰ぐ。

 駅伝があるから日本固有の実業団というシステムが成り立ち、多くの選手が長距離種目に取り組むことができる。箱根があるから多くの注目を浴びることができる。ただ、駅伝がすべてではない、ということ。その先にあるものを目指していけば、駅伝はむしろマラソンの低迷脱出の良薬となるはずだ。

朝日新聞西部本社スポーツ担当 堀川貴弘