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長身ランナーの復帰

2016年6月16日
2012年の福岡国際マラソンで2位に入った堀端
今年のゴールデンゲームズのべおかで高校生に混じって走る堀端

 189センチの長身ランナーはもがき苦しんでいた。先月、延岡市で開かれたゴールデンゲームズで久しぶりに堀端宏行(旭化成)の走りを見た。

 堀端といえば、2011年の大邱世界選手権のマラソンで日本選手最高の7位に入賞。翌年のロンドン五輪は補欠にとどまったものの、12年の福岡国際では2時間8分24秒の自己ベストで、優勝したジョセフ・ギタウ(JFEスチール)に次いで2位に入り、翌年のモスクワ世界選手権の代表に選ばれた。

 ここから彼の苦難は始まる。モスクワ世界選手権は体調不良で途中棄権。その後も足の疲労骨折やひざ痛などけが相次いだ。福岡国際で2位になった時、旭化成の宗猛監督が「精神面の強さが加われば、日本記録(2時間6分16秒)を更新できる」と話した逸材は表舞台から姿を消した。苦しむ堀端を見て、長年、チームを支える名マネジャーの楠光代さんは「私の足と代えてあげたいくらい」と話していた。

 ゴールデンゲームズは2年半ぶりのトラックでのレースだった。タイムは14分54秒16。自己ベストからは1分以上も遅く、高校生にも後れを取った。それでも堀端には充実感が漂っていた。「久しぶりのレースで緊張した。走っていて、最初は何が何だか分からない状態だった。高校生に太刀打ちできず情けないけれど、気分的にはすっきりした」。軟骨の炎症で「走っているとロックがかかるような状態だった」という左ひざは2度手術したという。「せめて15分は切っておかないと思っていた。必死でした」

 走れない日々が続いてもくさることはなかったという。東京にある国立スポーツ科学センター(JISS)でリハビリに励んでいる時に、同じようにけがに苦しむ一線級の選手たちを見て自分も頑張らなければ、と気持ちを奮い立たせた。さらに言えば、2大会連続で世界選手権に選ばれたプライドも彼を支えたのだろう。

 新陳代謝の激しい世界でもある。旭化成にも村山謙太、紘太、市田孝、宏の双子の兄弟をはじめ、最近は高卒2年目の茂木圭次郎ら若手選手が進境著しい。過去の実績は関係ない。

 堀端は来年のロンドン世界選手権を目指し、来春、選考会となる東京かびわ湖を走る目標を立てている。「もう一度、日の丸をつけて走りたい」と堀端は言う。「福岡はどう?」と聞いたら、「うーん、ちょっと間に合わないですかね」とやんわり断られた。

 堀端がつかめなかったマラソンの五輪の切符は今回、同僚の佐々木悟がつかんだ。佐々木は1歳上の30歳。堀端にもまだ巻き返しのチャンスはある。

朝日新聞西部本社スポーツ担当 堀川貴弘